獣害から獣財になるまで

 近年、日本各地で野生動物による農林業・生態系被害が問題となっています。対馬においても、毎年イノシシやシカによる深刻な被害が報告されています。
 daidaiでは、地域の人々の自立的な活動の支援や、捕獲を行っています。また、イノシシやシカを地域の「財」と捉え、お肉や革などの資源に変え、それらを使った教育活動を通し、野生動物と共存できる社会を生み出そうと活動しています。

1. 狩猟・捕獲

 対馬では、地域のハンターさんにより毎年1万頭を超えるイノシシやシカが捕獲されていますが、資源として活用されているのはそのうちの2割。活用されていない個体は埋設されています。daidaiでは、自社で捕獲した個体や、地域のハンターさんから箱罠やくくりわなを使って捕獲したイノシシ・シカを活用しています。

 捕獲の連絡があった際は、急いで解体処理専門のスタッフが現場に向かい、生きた状態を確認した後、スタッフ自身で止め刺し(放血)をし搬入しています。なるべくイノシシやシカたちにとって負担の少ないよう、早く的確な止め刺しを心がけています。
 これが安心・安全で美味しいお肉づくりにつながっていると考えています。

2. 処理・加工

 施設へと搬入されたイノシシやシカは、スピーディーかつ丁寧、何より衛生面には細心の注意を払いながら捌いています。皮を剥ぎ、内臓を取り出し、枝肉にするまでの全ての工程を、専門のスタッフが一人で行います。解体後は枝肉をプレハブ冷蔵庫に入れて冷却し、お肉の温度を速やかに下げることで細菌の繁殖を防ぎます。

3. カット

 2℃前後の冷蔵庫内で約10日間冷却をし、お肉を落ち着かせたらいよいよ部位ごとにお肉を切り分ける「カット」作業の開始です。一頭のイノシシ・シカは、骨を外し、ネック(首)・腕・肩ロース・背ロース・バラ・モモ・ハバキ(スネ)・ヒレに切り分けます。解体の際に付着した血液やお肉の中の細かい血管の一つ一つまで丁寧に取り除き、トリミングを行うことで、より安心・安全かつ、美味しいお肉をづくりを目指しています。

4. 販売

ジビエとして

 衛生面はもちろん、おいしさにも徹底的にこだわったイノシシ・シカのお肉を、精肉やソーセージ・ベーコンなどの加工品として製造・販売しています。対馬の豊かな自然の中で育ったイノシシ・シカのお肉の、季節によってさまざまな味わいをお楽しみください。

レザーとして

皮が革になるまで

 解体の際にお肉を取るために剥いだイノシシやシカの皮は、内側に塩を塗り込んで保存した後、兵庫県にある鞣(なめし)工場へと送られます。様々な工程を経て、工場で革へと姿を変え、再び対馬に戻ってきます。

対馬産レザーを使ったものづくり

 daidaiでは、レザー製品の製造も行っており、一つ一つ丁寧に手縫いで仕上げています。イノシシ革は野生み溢れるハリがあり、シカ革はしっとりなめらかな手触りが特徴です。野山を駆けまわった証として傷がある場合もありますが、一つの個性として、それらを生かしたものづくりを心がけています。

レザークラフト講座

 イノシシやシカの革を使ったレザークラフト講座も行っています。革を裁断したり、縫合したり、金具で留めたり。特殊な道具を使いながら、自分の手を動かしてカタチにする、「獣害から獣財へ」を楽しく体感できる講座を行っています。

耕作放棄地の活用

 これまで、増えすぎたイノシシやシカの被害対策として捕獲対策を行ってきましたが、野生動物のすみかとなっている耕作放棄地を解消しないことには根本的な解決にはならないのではないか、、そう思った我々は、2021年より耕作放棄地再生プロジェクトを開始しました。まずは自分たちの手の届く範囲ではありますが、使われなくなった田んぼをお借りして、畑にし、無農薬・無化学肥料の小麦や在来種のお野菜などを育てています。